33億6000万円

話す大人です

ブルートゥース・コネクテッド~iPhoneを探す邪道編~


怪奇!ビービー泣きながら交差点を往復する女!
iPhone落として3時間後に発見した話。見つけるのに使ったのはBluetoothイヤホン。アホの探しかた。ライフハック小話じゃなくて「ウエ~~ンひどい目にあったよ日記」だよ。こういうときの正しい対処は一応わかったので最後に記録しておくが、スマホなくしたらそれも見られないんだよな~


ウキウキでお出掛けした最寄り駅でスマホが鞄に入ってないことに気づき、しかしおうちに戻ってどんなに探しても見つからず、私の部屋はWi-Fiを引いてない無人島なのでスマホでのテザリングが封じられてはPCもタブレットもofficeが使えて『ゴールデンカムイ』『吸血鬼すぐ死ぬ』『動物のお医者さん』が全巻読めるだけの板でしかなく、コールで呼び出すことも家族や友達に助けを求めることもできない。
最初はどうせおうちのどこかにあるだろうと思い、仕方がないので近所の交番で頼んで(警察の皆さん本当にすみません)コールしてもらった。それでわかったのは「お宅にスマホはありません」ということだった。リスの小屋より狭い賃貸なので着信が鳴って気づかないのはありえない。うちにはない。駅に聞いたけどない。じゃあ落としたってこと!?
もう顔面蒼白。半泣きと大泣きの中間。午前の予定は当然つぶれた。一人の予定だったのが不幸中の幸いだったがiPhoneなくすとかマジで何事。予約とか決済とか連絡とかどうすんのマジ。


マジパニックで冷静な判断不可能状態のなか、とにかく交番で遺失届だけは出し、今のところ届いてないという情報をもらい、私は鞄からBluetoothイヤホンを掴み出した。タブレットはデータ通信も電話もできないので、これが持ち物のなかでiPhoneと通信できる唯一のアイテムだったからだ。ワイヤレスイヤホンと言いつつ長めのケーブルを首に引っかける形式のやつ(耳にちょっと入れるだけのやつはぜったいなくすからね)
こいつはiPhoneと接続するといつもポッと音を出し、"Bluetooth,connected"としゃべるのだ。
これをオンにして家と駅のあいだをうろうろした。ダメもとの苦し紛れだったがところがどっこい、近所の交差点でブルートゥースが繋がったではないか……うそでしょこのへんにマジであるんじゃん(私のiPhoneBluetoothイヤホンはお互いにしか接続したことのない唯一無二のペアだから、ペアリングもなしに速攻接続音声が流れるのはiPhoneしかありえない)……接続音声聞いたとき飛び上がるほどビビった。というかこれで「落とした」は確定した。落とすなあんな重いもんを。


しかしここからが長かった。とにかくBluetoothイヤホンの接続圏が意外と広い。性能のよさが仇となった形だ。交差点の全域で繋がる。声はすれども姿は見えず、交差点のまわりじゅうを探しても探しても見つからない。Bluetoothは無慈悲に繋がる。繋がるというのはこの半径10メートル圏内にあるということだ。つまり誰も警察にも駅にも届けておらず、ぜったいに自分で見つけるしかないという意味だ。それがむしろ絶望感。だってどうしても見つからない。交番へ探すの手伝ってくださいと頼みにいこうと思ったけど、人身事故が起きたからって言ってみんな出払ってしまった。それは当然だし事故の人は助かってくれ。こんなに狭いエリアなのに本当に見つからない。車にひかれてバキバキになっちゃったのかしら、とも思ったが、横断歩道の辺りに残骸はない。というか元気よく接続してるしな。無事なのはたぶん間違いないのだ。少なくともいまは。とにかく早くしないと。


もし親切な人がスマホを拾ったらどうするだろう?と何度も考えた。
① 平らなところや少し高いところに置く。
② そのへんのお店の人に預ける。
③ 交番に届ける。
たぶんこのへんの選択肢だ。3番は現実として届いてないので消去。このあたりにあるのは間違いないので①か②だ。親切じゃないこのへんのおうちの人が見つけていたら、ガメて自分ちへ置いてしまったかもしれない。やめろ!ご近所さんを信じろ!ともかく①②を信じて植え込みをあさり、塀の上を見まくり、空き家の郵便受けとかまで見た。開いているお店は日曜のくせしてほとんどなかったが(大丈夫かこの町(いい町です))イヤホンが「ブルートゥース、コネクテッド」てしゃべる範囲の開いてる店には全凸した。開いてないとこも念のためピンポンした。でもおばちゃんもおばあちゃんもおじちゃんもみんな知らないって。もうだめだ。もうだめだ。どうしよう。


一時間たって二時間たって見つからなくて、同じところをぐるぐるまわり、ごみ袋が積まれたところも漁った。ごみが回収されそうになったとこへ駆け寄って収集のおじさんに「この辺でっ携帯をっ落としてえ」「この山にはなかったよ!」みたいな会話もやった。家族と連絡が一切つかない状態なのが怖くて公衆電話まで歩いていって母に電話した。第一声「ママ!!!!!!」だった。弱りすぎだろ。あんたいくつや言うてみ。現代人の最悪の弱点iPhone。繋がった瞬間わんわん泣いてしまった。そこからはもうグズグズ。母に携帯にコールしまくってもらったけど、車やヘリコプターの音がうるさくてなにも聞こえない。ビービー泣きながら同じところをさまよい歩く。交差点の幽鬼、俺が怪奇現象や。きょうの午後はちょっと離れた町へ出て盆踊りにいきたかったのだ。だって今日の盆踊りなんてぜったい今年の踊り納めじゃん。私は盆踊りが大好きなんだ。あと2時間で盆踊りが始まってしまう。楽しい土日にしたかったのに。うちはありがたくも恐ろしくも永遠の過保護なので(過保護な理由は100パー私にあることは想像に難くない)両親が高速ぶっとばしてここへ来るんちゃうかな、という気もしたが、公衆電話までいかないと連絡がとれないのでわからない。さっき十円なくて100円玉入れたんだもん。100円玉もう1プッシュはさすがに嫌だ……あとマジで見つからなかったら本当に親に顔向けできんし……携帯代とかは普通にいい大人なんで当然自分で払ってるけどそういう問題ではなく……道なんかじゃなくて電車で落とした方がぜったい見つかる確率高いだろ!ブルートゥースコネクテッドじゃね~!!こんなに見つからないのにBluetoothだけはぜったい繋がるじゃん!!!!怪談だよ!!!!
泣きながら横断歩道をわたって、また横断歩道をわたってn回目に向こう側へ渡ったとき、小さな女の子と、いかにも運動できそうなパパが自転車に乗って、帰ったら何を食べるか相談していた。やきそば。かき氷。いいなあと思いながら、じろじろ見るわけにもいかないからすっと視線を外したーーさきに私のスマホがあった!あった!上に!自動販売機の!ちょっとはみ出して置いてある!!!


自動販売機の上!!!!!!ジャンプしてとびついて何とか取れた。親子はぎょっとしていた。そりゃそうだすまん。たぶん置いてくれたのは上背のある人だろう。背が低い女にとってそこは「手が届く」場所じゃないからすっかり見落としていた。あった!あった!あった!よかった!親切な人ありがとう!急いでただろうにありがとう!!割れてもない!きれいなままだ。iFace最高!めちゃくちゃ熱こもるけど丈夫さには換えられない。


交番からの着信が3件、母から6件、父から13件入っていた。
それで、まぬけなのはここからの話だ。遺失届を取り下げるため交番へ歩きながら、とにかくまず母に電話した。母の第一声がこれ。
「電話くれたあとに調べて、もうスマホがある場所は位置情報まで全部わかってたから、メメマミムの連絡を待ってたんだよ。もうそっち行こうかと思ってたけど」
ええ~~~~~???????????????????????????
いわく、だいぶ前に「iPhoneを探す」の設定をやっていたらしく、AppleIDのパスワードは家族間で共有していたため、父のiPhoneから私のiPhoneの位置が探知できたらしい。なんかそんなこと昔やったような、やらなかったような……
両親の方がデジタルに強いんかい。頼り甲斐がありすぎる。
アタイの涙はなんやったん……バチが当たったのかな……


とにかく、私の手持ち機器で本当にやるべきだったフローは以下だったことがわかった。
タブレットをもってWi-Fiのある場所へ行く(飲食店か携帯ショップ、あとはジャパンWi-Fiなどを無料でDLしておくとたぶん使えるんだと思う)
② AppleIDでログイン(ブラウザからなのでタブレットの機種関係なし)
③ 「iPhoneを探す」で位置情報取得


iPhoneを探す」って便利だね!手動でやるんじゃねえ!
ともあれ見つかってよかったです。警察の人には「あれからずっと探してたんですか……?すみません同行できなくて……」てすごい謝られた。いやすみませんこちらこそ……
しかし些末なことに見えて、つらいときにスマホで気を紛らわすことができないのは相当しんどかった。「くしゃみ 消費カロリー」とか検索できないの苦痛過ぎる。TwitterができないLINEができないのもしんどかった。私は思った以上に「やろうと思えばいつでも誰かに自分の話を聞いてもらえる・自分の状況を知らせられる」状態を常時求めてるっぽいので、iPhoneがなかったら結婚と離婚をすでに5回くらい繰り返している可能性がある。
あとわかったのは思った以上に母を精神的支柱にしているということだったが、まあ、まあ、まあ………依存しがいのある頼れる母でね……


おかげさまで盆踊りはとっても楽しかった。出店ゼロで3時間ストイックに踊りつづける、本当に「盆踊り」しかない催しですごかったが、泣きながら歩き回ったあとだったので本当に足腰が死んだ。
はじめて踊る曲も多かったが、ハワイ音頭の歌詞に「色即是空」が入ってるのが聞き取れた衝撃は多分一生思い出すと思う。